地図を読む人:Navigator or Stranger?

私は何故か、よく人に道を聞かれる。地元だけでなく旅行先でもである。何かしら馴染んで見えるのだろうか?あるいは聞きやすそうに見えるのだろうか?

先日、工事現場に向かうようなニッカポッカのオジサンに「二丁目はどっちですか?」と聞かれた。
オジさんの手には紙の地図が有り、最寄り駅から目的地までピンクの蛍光マーカーで道筋が塗られていた。この手の案内は、何処かで曲がる方向を誤ると、ひたすら違う方向に行ってしまうものである。が、幸い、坂戸二丁目は私の近所である。
だがしかし、もしやと思い「何処の二丁目ですか?」と聞くと上小田中二丁目であった…隣の町である、私の職場の近所だ。時間に余裕が有ったので、私はオジさんと一緒に歩いて案内した。おそらく、オジさんは、行く人行く人に「二丁目はどっちですか?」と聞いて、その町の二丁目方向に誘導されたのであろう。

『話を聞かない男、地図が読めない女─男脳・女脳が「謎」を解く』という本が有る。中には、私は聞き役だという男性や、私は地図を読めるという女性で憤慨されるかたもいるかもしれないが、二つの統計群の有意差は必ずしも個体差を意味する訳ではない。テレビ番組の『炎の体育会TV』では男性お笑い芸人が女子トップアスリートと戦っているではないか。

一般に男性の方が女性より空間認知能力が優れている傾向があると言われている。だからと言って「女は地図を読めない」と断言するのは失礼千万である。だが、しかし、実は、地図が女性に分かりづらく作られているという説がある。

これもまた、とあるテレビ番組での実験であるが、2回指示通り曲がる看板を見せ、その通りに曲がれば賞金が貰えるという実験をした。ちょっと引っ掛けがあって、実は看板は回されていて、地図の上が必ずしも見ている方向と一致してないのである。

男性の多くは道の形から方向を理解して辿り着くのだが、女性の多くは何故か逆方向に行ってしまった。

今度は、長い距離で地図を持って途中3回曲がって歩くと目的地に辿り着く実験をしたら、男性の多くはちゃんと辿り着いたが、女性は何処かで迷うと、自分の位置と向きが分からなくなり、地図をクルクル回し始め、あらぬ方向に行ってしまった。

今度は書き方を変えた地図を渡して同種の実験を行ったところ、奇妙なことが起こった。今度は目的地に辿り着くのは、ほとんど女性になってしまったのだ…

果たして、どんな地図が渡されたのか…それは目的地の道筋に関係ない交差点は大雑把に省き、曲がるポイントでの目印になるものを指示したものであった。例えば「銀行のある角を右に」といった指示で。普通に歩いている時、周囲の出来事に気付くのは、どうやら女性の方が強いのだ…傍から見ていたら、絶対に気付くであろう目印を男性はあっさり見落としてしまうのだ…大事な目印を見落とした男性は哀れなことに、最早、元の道には戻れず、敢えなく迷子になるしかないのだった。

現代では、GPSと電子コンパスを装備したスマホ持ちの人が増えたため、ますます自分の居所と向きを認識する力が退化しているのだろうか?

そして、ある朝、ある青年と出会った「とどろきアリーナはどっちですか?」どっちかと言えば、君の向かっている方向の右斜め後ろだが…とからかっては失礼だし、かと言って、私は今日は時間に余裕は無い。自分のケータイでEZナビの地図を出してざっくり見せて説明しようとすると…おもむろに彼が「ここなんですが…」と手にしたのはGoogleマップの立ち上がって道筋表示されたスマホであった…これでも行けないのなら最早、バスかタクシーに乗っていただくしかあるまい...orz


MURAKAMI-TAKESHI-IN-THOSE-DAYS
当時の本 積読山脈は更に高度を増し、裾野を広げている…自炊もままならない…読む速度より買う速度が速い
当時の世 いわゆるゴールデンウィークというやつである
当時の私 何故か仕事は困らないくらいたくさんあることに困っているらしいが、深夜・休日出勤禁止なので、以前のようには働いていない

文庫版 話を聞かない男、地図が読めない女

文庫版 話を聞かない男、地図が読めない女