三食据え膳ゴロ寝つき軟禁

最初の夜は、ちっとも寝付けなかった。寝床が違うからか、仰向けに寝ていると腰が痛くなる。横向きになってみても寝付けない。そうこうしているうちに、結局5時前くらいまで眠れなくて、その後、一時間ほど、夢かうつつかという感じでうつらうつらしていた。
6時が起床時間である。普段より早い。けど、ろくに寝てないのに起きている。便通はあったが、まだ前日のバリウムが残っていたのか、便器の水は白濁し、水没したうんちの色、形は確認不能であった。ま、ずっと形がなかったのだから、形があるだけ良好だと言えよう。
7時頃、検温と採血。「右と左どっちから採りますか?」と問われて判断基準がよく分からない私は、昨日、右左両方の腕を使用済みだったが、右腕の方が少々アザになっていたので、左腕でお願いした。採血が済んで、看護師さんに「おつかれさまでした」と言われて、なんだか変な感じだった。そう、私の悪い癖のつまんないツッコミが心の中で「いや、つかれてないけど」と囁いたのである。
6:45頃に、熱々のお茶が湯呑みに注がれた。ごはんを食べる頃にいいお湯加減に冷めるのであろう。7時、朝食が配膳されてくる。いただきます。あの、下げ膳はどうすればいいのですか?どうやら、ぼくは、まだ部屋を出てはいけない身で、専用食で、食後一時間安静なためかしら、片付けもしてくれるとのことだった。三食据え膳ゴロ寝つきの贅沢である。
早速、朝食後の安静にしていたところ、8:40頃、ベッドのお掃除しますと言われて起きる。換気のために窓を開けるので、あとで閉めてくださいと言われた。了解。
9時過ぎ、そろそろ安静を解除していいかしらなんて思っていると、お風呂やシャワーは、まだダメってことで、身体を拭くだけになるんですが、タオル持ってきましょうか。と言われたのでお願いした。清拭タイムである。確か、森鴎外さんはお風呂に入らず清拭を習慣にしてたのでなかったか。いや、別に自分を文豪になぞらえたいわけではない。洗面器に白2本、オレンジ色2本のアツシボが入っていた。白は上半身用、オレンジは下半身用と使い分けるとのことだった。にしても、個室とは言え、基本的にドアは開放、カーテンも少し開けてるので、そのなんていうかパーソナルスペースな感じがしなかったが、ま、いいか。と身体を拭いた。
10時頃、お部屋の掃除に来られる。
少ししたら、主治医の先生が来られて、血液の検査の精密な結果はまだだけど、数値は入院初日よりは改善が見られるとのことだった。海外旅行の経験は?ないです。聞きにくいですが、不特定な相手と性的な接触はありますか?ないです。
ウイルスの線よりは、おそらく飲み過ぎのせいだと思うのだが。本人が飲みすぎだと申告しても調査はされるのである。
11:45にまたお茶が入れられ、12:00から食事。一時間ゴロゴロしたあと、14:00頃、検温37.1℃。思わず「高いなぁ」と言う、経験的には36.2℃が平熱のような気がしてたが、昔の話だから、最近はこんなもんなのかな。ひょっとすると直前にベッドの上でゴソゴソとストレッチなどしたせいかもしれない。時々眠気が襲ってくるが、昼間に眠ると、夜に眠れなくなるからとガマンと言いつつも、目を閉じただけで浅い眠りの中で、ショートショートな夢を見ていた。というか、意識は起きてるつもりなのに、目の前に広がる(ように感じている)光景が、病室のそれではないのであった。
手持ちの本は、もう何回読み返しただろうか。何をして時間を過すのがいい方法だろうか。などと、思いつつ、考えられず、ぼんやりしていた。
17:45にまた熱いお茶が入り、18:00から食事。一時間ゴロゴロして、19時過ぎに血圧測定125/70。思わず「低っ」と言ったが、看護師さんに「正常ですね」と言われた。というか、おいらの高血圧の原因もまた、飲み過ぎだったということに帰結するのであろうか。
22時が消灯時間であったが、21:30には床に就いた。就いたが、寝る姿勢がやはり決まらず、ゴソゴソしていた。